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IDE 現代の高等教育 「発達障害学生への対応」 12月号掲載

  • 2012.10.31 Wednesday
  • 07:06
IDE 現代の高等教育 「発達障害学生への対応」 12月号掲載

平成16年12月、超党派の議員立法で「発達障害者支援法」が成立し、翌17年4月から施行された。LD(学習障害)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、自閉症等、いわゆる発達障害と総称され、教育的な特別な支援の対象外に置かれていた児童生徒への本格的な理解と対応が始まることとなった。発達障害のある者、その保護者、そうした児者に対しての啓発と指導に取り組んできた専門家たちにとって、長年希求してきた厚い扉がやっと開いた瞬間でもあった。

1 発達障害を理解するための基本的事項
わが国で法律的に用いられる「発達障害」は、国際的、あるいは学際的に必ずしも合意された概念ではない。その理由は、知的な発達の遅れをもつ知的障害(かつては精神遅滞と呼ばれていた)をめぐっての概念的混乱がそこにはあるからである。
医学領域では、米国精神医学会の診断分類であるDSM--R(1987)により「発達障害(developmental disorders)」の概念が導入され、精神遅滞、広汎性発達障害、特異性発達障害があげられた。第4版(DSM-,1994)では、LDとほぼ同義である特異的発達障害の名称が消えた。伝え聞くところでは第5版(DSM-后砲間もなく刊行されるが、精神遅滞は知的障害に、広汎性発達障害やアスペルガー障害は自閉症スペクトラム障害へと概念名称も大きく変化するようである。
わが国では先の発達障害者支援法により、発達障害は、「自閉症、アスペルガー症候群(障害)その他の広汎性発達障害、学習障害、注意多動性障害その他これに類する脳機能の障害」とされている。知的障害は、すでに支援する法律があったためこの法律の対象からは除かれている。
自閉症はすべての知的発達水準で存在するが、WHOが編集する国際疾病分類ICD-10によれば、「約4分の3の症例では、著しい精神遅滞が認められる」とある。知的障害を伴う自閉症はすでに支援の対象ではあったが、発達障害者支援法によってその特性理解を一層深めるとともに、知的発達に遅れのない高機能自閉症やアスペルガー症候群への新たな対応が保障されたわけである。
もうひとつ、発達障害を理解する基本事項としてあげておきたいのは、自閉症やADHDが医学的な用語であるのに対し、LDはこの用語の発祥である米国などでは教育用語として成熟してきたという事実である。米国の学校教育ではLDの支援のための有資格認定はスクールサイコロジストと教師によってなされるのに対し、わが国では伝統的に医師の診断が前提となるケースが多い。
平成4年から11年における文部科学省の「学習障害及びこれに類似する学習上の困難を有する児童生徒の指導方法に関する調査研究協力者会議」において示されたガイドラインでも、LDに関しては専門家チームにおける総合的検討による「判断」という言葉を用い、医学用語を連想させる「診断」という表記を避けている。
 
2 初等中等教育における特別支援教育をリードする発達障害
平成18年度から義務教育段階における特別支援教育制度である「通級による指導」に初めてLDとADHDが指導対象として明記された。同時に、それまで情緒障害という種別の中で扱われてきた自閉症を分離し、新たな障害種別として扱うこととなった。その結果、発達障害者支援法が施行された平成17年度以降の「通級による指導」を受けている児童生徒数の推移をみると、初等中等教育における特別支援教育の中で発達障害への支援が劇的に拡充していく様子がよく分かる。
LD、ADHD、自閉症など、新たに障害種として認められた発達障害のある児童生徒の「通級による指導」総数は、平成18年度の6,894人から、5年後の平成23年度には25,181人と3.7倍にも急増している。他の障害種の数がほとんど変わらないか、微増に留まっていることと比較しても、特殊教育から特別支援教育への転換の中で、発達障害が大きな役割を演じていることが示される。
これらの急激な伸びが今後どのように推移するかについては、「通級による指導」が期待通りの教育効果を挙げるならば、という条件付きではあるが、さらに何倍にも増える可能性がある。その根拠は、潜在的に通常の学級にいる発達障害のある児童生徒の数の推定にある。
平成14年に文部科学省が、通常の学級の担任を対象に、LD、ADHD、高機能自閉症などの学習・行動特徴を有する児童生徒に関する全国実態調査を行っている。この調査では、発達障害間の重複を認めたうえで6.3%という数値が報告され、その後の特別支援教育における発達障害施策展開の拠り所とされた。この約6%という割合から推定される発達障害の総数は60万人を超えており、支援を求めるニーズはまだまだあると予想される。(この調査からちょうど10年目の現在、再調査が実施されており、その結果報告が待たれているところである。)

3 高等教育にも波及し始めた発達障害のある学生への理解
発達障害のある者に対する教育支援は、初等中等教育から高等教育へと次第に水位が上がるように進みつつある。発達障害者支援法の第8条にも「大学及び高等専門学校は、発達障害者の障害の状態に応じ、適切な教育上の配慮をするものとする」と規定されてはいるがその速度はまだ緩慢である。
日本学生支援機構では平成17年度より、毎年全国の高等教育機関における障害のある学生の修学支援に関する実態調査を毎年行っている。この調査は回収率100%という驚異的な数値で知られるが、高等教育機関における障害学生支援の実態を明らかにする数少ない貴重な調査といえる。
本年2月に公表された平成23年度調査結果によれば、高等教育機関に在籍する障害のある学生数は、10,236人だった。この調査での障害学生数は、身体障害者手帳等(精神障害者保健福祉手帳、療育手帳)を有している学生や健康診断等において障害があることが明らかになった学生の数である。高等教育機関に在籍する全学生数は約324万人なので障害学生の割合は、全体の0.32%(平成21年度0.22%、平成22年度0.27%)となる。障害種別については次の表に示される。

 表 高等教育機関における障害種別による学生数 全障害学生数10,236(人)平成23年5月1日現在
視覚障害 681人(6.7%)/聴覚・言語障害 1,556人(15.2%)/肢体不自由 2,491人(24.3%)/
病弱・虚弱 2,047人(20.0%)/重複170人(1.7%)/
発達障害(診断書有) 1,453人(14.2%)
その他 1,838人(18.0%)
(出所:「障害のある学生の修学支援状況」日本学生支援機構)

表によれば、発達障害のある学生が全障害学生に占める割合は、14.2%(平成21年度8%、平成22年度12%)であり、割合は決して高くはないが増加傾向は顕著である。近藤武夫は平成23年5月に開かれた第6回全国大学入学者選抜連絡協議会における「日米比較からの知見」と題する発表のなかで、米国における高等教育における障害学生の割合は10%を超えており、LDとADHDが30%近くを占めていると報告しており、日米の間では数値の上には大きな乖離がある。障害の種別や分類法は国によっても相異があるので単純な比較はできないが、わが国においては後発ともいえる発達障害のある学生への高等教育における理解や支援体制はまだ着手されたばかりといっても過言ではないだろう。

4 センター試験における特別措置としての発達障害区分の導入
高等教育における発達障害のある学生の受け入れは、その数からみれば始まったばかりであるが、その入口に位置する大学入試センター試験では平成23年度入学者選抜(平成22年1月実施))において大きな変化があった。大学共通一次試験が改称され大学入試センター試験として初めて実施されたのは平成2年1月からであるが、身体障害のある者への特別措置は当初からあった。
平成23年度入学者選抜から従来の身体障害に属する、視覚障害、聴覚障害、肢体不自由、病弱に続き、5番目に発達障害区分が導入された。目前に迫っている国際的な障害者の権利に関する条約の批准と、国内における発達障害支援法の施行と具体的な施策展開のなかで、初等中等教育における発達障害のへの理解推進が大きく進み、数年後には高等教育にも波及してくることが十分に予想されるなどの動向がその背景にはあったと思う。
センター試験においては、発達障害はその様態が多様であることから、医学の診断書と同時に、教育関係者からの状況報告・意見書を求めているのが特徴である。主要な措置事項としては、初年度は、読みに関する障害が認められる場合の「試験時間の延長」や「拡大文字問題冊子の配布」、マークシートを塗りつぶす代替措置としての「チェック解答」、環境調整としての「別室の設定」等が、次年度には「注意事項等の文書による伝達」が付け加えられた。
これらの事項の決定は、申請に応じて専門家による特別措置委員会によって判断される。また来年の実施にあたっては、すべての特別措置申請が、従来よりも一カ月繰り上げられ8月1日からとなり、9月5日(消印有効)までに申請のあったものについては、9月中に本人に結果が通知されることとなった。これまでの12月という措置決定は遅く、推薦入試や受験希望大学の決定のために、少しでも早く結果を伝えて欲しいという志願者からの要望に応える大きな変更である。
こうしたセンター試験における変化は、特別支援教育についての高等学校側の一層の理解と対応が前提となるものであるとともに、センター試験を利用しない大学や二次試験などにおける各大学での発達障害に対する特別措置の広がりを求めることにもなるだろう。同時に、試験を課さないAO入試等の入学者のなかにも発達障害のある学生がかなりいることが予想される。これら入学させた学生に対して適切な教育支援を行う責務を大学自身が負うべきであることを自覚しなければならない。

5 発達障害のある学生に対する教育支援と残された課題
発達障害は、障害としてはこれまで支援の対象外にあった新しい障害であり、見えにくい(インビジブル)障害ともいわれる。いいかえるとその障害状態は、障害のあるものとそうでないものとの中間的に位置しており、いわば架橋的な存在であるともいえる。しかし、彼らが個性的存在であり、いかに中間的な存在であるとしても、支援を必要としていることに違いはない。
先の日本学生支援機構の例年の調査でも,発達障害の場合、医者の診断書は持っていないが学生生活を維持するうえで支援が必要だと判断されたものは診断書を有する学生の2倍以上もいる。そうした学生も含め、学生生活における具体的な支援とはどのようなものが必要であろうか。高等教育における発達障害のある学生に対する具体的な支援について述べる。
センター試験において発達障害区分が導入され、特別措置に大きな変化を与えたが米国や英国の大学入試における特別措置と比較しての大きな相違は、LDの中核にある読み書き障害に対する人的サポートである。つまり経験のある代読者や代筆者の採用であるが、欧米では二親等以内の人や担任教師がその任にあたることは制限されており、これら質の高い人材を見つけることは必ずしも容易ではない。
むしろ、今後期待されるのは、読み上げソフトなどPC等の利用ではないだろうか。
ただし、ここでもさまざまな条件がつく。進歩の著しいICTの世界で、使い慣れたPCを用いるためには、個人所有のPC使用を認めることが現実的であるが、どのような使用制限とその監視体制、疑義が生じた場合のプロトコル処理体制など、検討・整備しなければならない事項は多い。何よりもこうした条件整備にあたっては、高等学校等における通常の授業や日常環境でのこれら機器の使用が十分に普及しなければ公平性の担保が強く要求される試験環境には馴染まないというもどかしさが残る。
学生が潜在的に持つ基本的能力が障害等によって十分に発揮されない状況の時、さまざまな支援や措置によって、その力が発揮できる環境を保障にするという考え(アコモデーション)がそこにはある。同時にコスト面や物理的制約等から、必ずしも同じ内容を常に担保するのではなく、質を変えてもその公平性が損なわれないと判断する考え(モディフィケーション)もあることを検討課題として挙げておこう。
 こうした入試における特別措置の多くは、入学後の授業等においての支援サービスとして継続しなければ意味がない。それら事項を列挙してみよう。.ΕД屮汽ぅ箸らの授業内容をダウンロードできるサービス、∋前に授業内容のコピーを渡すサービス、テープやデジタル教材のサービス、ぜ業時におけるPCやテープレコーダー等の使用許可、ゥ痢璽肇董璽ーサービス(ノートが取れない学生への配慮)Τ惱サポートチューターや日常的なカウンセリングサービス等。
大切なことはこれらサービスが本人にとって利用しやすく、また効果を十分上げなければサービスに値しないということを、準備する側が十分に認識しなければならないことを最後に指摘しておこう。(了)

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